てんかんとは

てんかんのイメージ写真

てんかんとは、脳の神経細胞が異常に興奮し、それが広がって、さまざまな神経症状を引き起こす「(てんかん)発作」を反復するものとされています。
とくに、脳の一部分が異常活動し、それが引金となっててんかん発作が起こる場合、その部分を「てんかん焦点」と呼びます。
神経細胞の興奮の結果、脳の機能が障害され、体の強直やけいれん、脱力、異常感覚、記憶障害などとともに、発作が広がるともうろう状態となったり、意識を失います。
発作はおおむね数秒から数分続き、発作後症状が残ることもありますが、回復すると平常通りの生活にもどることができます。
てんかん発作が押えられず、慢性化すると、脳の機能が障害されます。
特に小児のてんかんは脳の発達に重大な影響を及ぼし、1/3の患者に精神・発育・学習の遅れが生じ、重度の場合には脳機能が荒廃します。
成人でも記憶障害、認知障害、精神障害、運動障害といった神経症状を伴うことがあり、発作のみならずこれらの脳機能障害のため、就労に支障をきたすことが問題となっています。

検査について

問診や脳波検査のほか、MRIなどの画像検査で脳の形態や血流などを確認することで診断をつけます。
そのほか、尿検査や血液検査も行っていきます。

治療について

薬物治療

てんかん治療の原則は抗てんかん薬による薬物治療です。
てんかんの発作型あるいは病態に応じた薬があり、正しい診断に基づいた最適な抗てんかん薬によって治療を受けるべきです。

しかし、薬物治療を尽くしてもてんかん発作がつづくとき「難治てんかん」と診断されます。
一般的には3種類以上の抗てんかん薬を試みた後も発作が持続する場合とされます。
てんかん患者の60%は薬物治療で発作が消失し、20%程度は発作が1/4以下に減少します。
従って、薬物治療を受けるてんかん患者の約20%が難治てんかんとなります。
発作によって日常生活への支障が大きい場合には外科治療を検討したほうがよいでしょう。
最近の手術成績は非常に良好であり、難治性てんかんの10~20%は手術が有効と考えられています。

また、「内側側頭葉てんかん」など難治てんかんの種類によっては、手術が奏功することが知られており、このような場合、薬物療法にこだわって期を逸することなく手術治療を行うことが勧められます。

外科治療

てんかんはそれのみでは直接生命に関わることは稀です。
しかし、難治てんかんは、特に乳幼児や小児では重度の精神発育遅滞をきたし、人生に与える影響ははかり知れません。
成人でも就労や運転、妊娠など社会生活においてさまざまな制限が生じ、生活の質が損なわれます。
また薬の副作用や定期的に服用することの煩わしさも看過できません。

近年、脳磁図(MEG)や頭蓋内電極法など診断法や外科手技の進歩により、外科治療の効果と安全性が向上し、有力なてんかん治療手段として認識されつつあります。

手術が勧められるかどうかは、単に手術によっててんかん発作が抑えられるかどうかだけでなく、手術による脳機能障害や合併症、手術しない場合の予想される経過、薬の副作用、さらに患者さんがおかれている社会的背景など総合的に判断し、手術治療の利益が薬物治療あるいは手術の合併症の不利益を上回ることが予想される場合に限られます。
とくに小児の場合、発達や脳の可塑性が重要です。
例えば、大脳半球切除術後でも、正常な精神運動発達が獲得できるという事実は、障害をきたすような手術でも、早期に発作を抑制できれば脳の可塑性が失われた脳機能を再生させ、手術による損失を埋め合わせることができるという可能性を示しております。

手術治療が有効なてんかんとして、内側側頭葉てんかん、皮質形成異常、脳腫瘍、脳萎縮や瘢痕、片側脳形成不全(片側巨脳症)、スタージ・ウエーバー症候群、結節性硬化症、ラスムッセン脳炎、強直発作、脱力発作、間代発作、強直間代発作など突然転倒して重度の外傷や事故をきたす危険な発作などが挙げられています。

手術法はてんかん焦点を取ってしまう「切除外科」と、神経繊維を切っててんかんが広がらないようにする「遮断外科」に分かれます。
代表的な手術術式は、皮質焦点切除術/病巣切除術、側頭葉切除術、MST(軟膜下皮質多切術)、脳梁離断術、大脳半球離断術があります。
加えて最近、治療抵抗性のてんかんに対して迷走神経刺激術が一部の施設で行われるようになりました。
手術による合併症を防ぎ、最大の効果を得るため、それぞれの方法を単独あるいは組み合せて治療します。

正しい診断のもと行われた手術成績は非常に優れており、おおむね70%の患者で発作が消失あるいは激減します。
特に、内側側頭葉てんかんでは約70%の患者で発作が消失し、残りの患者においても発作が激減します。