頭部外傷とは

頭部外傷のイメージ写真

何かしらの外力が頭部に加わることで、頭部が損傷(切傷、挫傷、皮下血腫 など)、頭蓋骨骨折、脳損傷(脳挫傷、脳内血腫、脳震盪、びまん性脳損傷 など)といった外傷を負っている状態が頭部外傷です。
ちなみに外力とは、転倒・転落、打撃、交通事故といったことで引き起こされる力学的な損傷のことなどを言います。

頭部に強い外力を受け、以下のような症状がある場合は一度ご受診ください(例)

  • 吐き気を催し、嘔吐を繰り返す
  • だんだん頭痛がひどくなる
  • 意識が朦朧としている
  • 手足を動かしにくい
  • 物が見えづらい
  • けいれんが起きている
  • 出血がひどい
  • たんこぶがよくならない
  • 血液混じりの水が耳や鼻から出た など

軽度な頭部外傷(たんこぶができたが他に症状がない、など脳の損傷した可能性が低い場合)は、治療を行わなかったとしても問題ありません。
ただし、傷口が深い場合は感染症に罹患する可能性も考えられるので治療をしっかり行うようにしてください。

脳損傷の可能性が高い場合は、頭部CT、MRIなどの検査をし、頭蓋骨の状態や脳内に血腫などがないかといった異常の有無を調べていきます。
高度医療機器を用いた治療(手術による外科的治療)や入院加療が必要という場合は、当院と提携している総合病院や専門の医療機関を紹介します。

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫とは、頭部外傷後慢性期(通常1~2ヶ月後)に頭部の頭蓋骨の下にある脳を覆っている硬膜と脳との隙間に血(血腫)が貯まる病気で、血腫が脳を圧迫して様々な症状がみられます。
慢性硬膜血腫は通常、高齢で男性に多く見られます。
軽微な頭部外傷が原因とされていますが、頭部外傷があったかどうかわからない場合(例えば、酔っぱらっていた、認知障害のある人など)も10~30%に存在します。50歳以上の高齢者の男性に多くみられます。
その他発症に影響する因子として

  1. 大酒家
  2. 脳に萎縮がある(頭蓋骨と脳の間に隙間が多い)
  3. 出血傾向がある場合や脳梗塞の予防の薬(坑血小板剤や抗凝固剤)を飲んでいる場合
  4. 水頭症に対する短絡術などの術後
  5. 透析
  6. 癌が硬膜に転移している場合

などがあげられ、慢性硬膜下血腫を生じやすい条件として注意を要します。
一般的には軽微な頭部外傷後の慢性期(3週間以降)に頭痛、片麻痺(歩行障害)、精神症状(意識障害、認知障害)などで発症します。
原因は頭部外傷で脳と硬膜を繋ぐ橋静脈の破綻などにより硬膜下に脳表の髄液などと混ざった血性貯留液が徐々に被膜を形成しつつ血腫として成長するとされています。
血腫を覆う膜(被膜)は厚い外膜と薄い内膜から構成されています。
好発部位は前頭、側頭、頭頂部で、右か左かの一側性のことが多いのですが、時には両側性(約10%)に見られます。

症状として、典型例では頭部外傷後.数週間の無症状期を経て頭痛、嘔吐などの頭蓋内庄亢進症状、片側の麻痺(片麻痺)やしびれ、痙攣、言葉がうまく話せない(失語症)、認知障害や意欲の低下などの精神障害とさまざまな神経症状が見られます。
これらの症状は年代によってかなり差がみられ、若年者では主に頭痛、嘔吐を中心とした頭蓋内庄亢進症状、加えて片麻痺、失語症を中心とした局所神経症状がみられます。
一方、高齢者では潜在する脳萎縮により頭蓋内圧亢進症状は少なく、認知障害などの精神症状、失禁、片麻痺(歩行障害)などが主な症状です。
認知障害だけで発症する慢性硬膜下血腫もあり、比較的急に認知症の症状が見られた場合には慢性硬膜下血腫を疑うことも重要です。
また時として急激な意識障害、片麻痺で発症し、さらには生命に危険を及ぼす場合(脳ヘルニア)の急性増悪型慢性硬膜下血腫も存在します。
この時は重症な脳卒中と極めて似た症状を示します。

検査について

壮年~老年期の男性で頭痛、片麻痺(歩行障害、上肢の脱力)、記銘力低下、意欲減退、見当識障害、認知障害の精神症状が徐々に進行する場合、まず本疾患を疑うことが診断の第一歩です。
高齢者などでは老人性痴呆、脳梗塞として扱われている場合が少なくありません。
もちろん成人でも男女問わず頭部外傷後数週間経過してから前述のような症状が見られたならば本疾患を疑うべきです。
特に飲酒家、数カ月前に頭部外傷の既往があればより本疾患である可能性が高いといえます。
画像診断として、まず通常の頭部単純X線撮影での診断は特殊な石灰化した慢性硬膜下血腫以外は不可能です。
診断を確実にするにはCTスキャンあるいはMRIが有効かつ必須です。

治療について

血腫が小さい場合は自然に治癒する場合もありますが、基本的な治療法としては外科的治療が推奨されています。

外科的治療

通常の慢性硬膜下血腫に対しては一般に穿頭やtwist-drillによる閉鎖式血腫ドレナージあるいは穿頭(1~2ヶ所)に加えて血腫排液・血腫腔内洗浄術(以下、穿頭血腫洗浄術を行うのが主流です。
穿頭血腫洗浄術は血腫被膜を残したままですが、血腫除去による減圧と血腫内容の洗浄除去により出血源となる被膜の炎症性変化を消退することができ、本来の吸収過程に向かわせ血腫腔の消滅を図るもので、本疾患の治療法として今日普遍化された手技です。
又近年では血腫が多房性で難治性の症例などに内視鏡を併用した穿頭血腫洗浄術も行われています。

保存的療法(非手術療法)

前述したように手術加療が原則ですが、小血腫例や無症候例などでは経過観察や血腫内容液に対して浸透圧利尿剤を用いた薬物療法などを行う場合があります。